「どうもこんにちは~」
『こんにちは~』
「早く全世界のティッシュがなくなってしまえばいいですね」
『いやそれはキツイよ。今は花粉症のシーズンだもん。鼻かめなくなるでしょ』
「ところでね、こないだね、トイレに行ったんだよね」
『トイレは毎日行くでしょ。なんでそんなディズニーランドに行ったよみたいなテンションで言うのよ』
「言葉の綾だよ」
『どんなあやだよ』
「まあいいじゃん。それでさ、トイレに行ったらね、トイレの花子さんに会ったんだよね」
『トイレの花子さん?あの妖怪の!?』
「そうそう。あの花子さん」
『なんでそんな近所の田中おばあちゃんみたいな感じで言うのよ』
「みんな花子さんに親近感あるでしょ」
『まあ確かにね、親近感はあるよ。でもね、身近に田中おばあちゃんはいても、トイレの花子さんはいないよ。花子さんはね、意外と学校のトイレにはいないのよ。テレビの中にしないのよ花子さんは』
「そうかそうか。それでね、花子さんが言うにはね、今、学校のトイレが大変なことになってるんだって」
『大変なことって?』
「日本中がトイレットペーパーを買い占めてるせいで、学校中のトイレットペーパーがなくなってるんだって」
『それはマジで大変だね。妖怪だって用を足すときは紙を使うもんね。多分ね、口裂け女も紙使うよ。だって口があるもんね。物を食べる口があるからね、出すところがあっても不思議じゃないのよね』
「うん。だからね、花子さんと一緒にトイレットペーパーを買いに行ったんだけど」
『一緒にトイレットペーパー買いに行ったの!?』
「ああ。コンビニに」
『コンビニに!?それはもうトイレの花子さんじゃなくてコンビニの花子さんだよ。花子さんはね、学校のトイレにいるからトイレの花子さんになれるわけで、トイレからいなくなったらただの花子さんなんだよ。村人Aと同じなんだよね』
「村人Aが花子さんだったらだいぶ心強いけどね」
『んーまあ確かに』
「それでコンビニに行ったらさ、トイレットペーパーがあったんだけどね」
『あーよかったねぇ』
「それがさ、トイレットペーパーお1人さま1つまでってあったんだけど、花子さんは妖怪だから1人なのか1匹なのかよくわからなくてさ」
『どっちでもいいよ!妖怪の正しい数え方は知らないけど、概念としては花子さんも1人でいいよ。コンビニの人だってね、トイレにいるべきはずのトイレの花子さんがトイレットペーパー買いに来てたら少しくらい目をつむってくれるよ。わざわざトイレから出てきてまでトイレットペーパー買いにきてくれた花子さんのことに優しくしてくれるよ』
「まあとりあえず花子さんと一緒にトイレットペーパーもってレジに行ったんだけど」
『うんうん』
「レジにいたのが近所の田中おばあちゃんでね」
『田中おばあちゃん本当にいたんだ!?』
「うん。田中おばあちゃんね、老後はもうやることがないからってコンビニでパートやってるって言ってた」
『しかもお客さんじゃなくて従業員だったんね田中おばあちゃん。元気ね~』
「田中おばあちゃんめちゃくちゃ元気だしユーモアがある人なんだよ。いつもマスクしてて、たまに『わたし、綺麗?』って聞いてくるの楽しいし」
『それは口裂け女!田中おばあちゃん人間じゃないじゃん、口裂け女じゃん、こわ!なにそのコンビニ。客がトイレの花子さんで従業員が口裂け女ってどうなってんの。ゲゲゲの鬼太郎だってこんなコンビニ来たことないでしょうよ。鬼太郎は家と学校の往復だけで終わる男だし』
「田中おばあちゃんね、トイレットペーパーがないの大変よね~って言ってた」
『ああまあ確かにそうよね』
「それでね、田中おばあちゃんね、私はトイレットペーパー使わないから関係ないけどって言ってた」
『嘘嘘!絶対嘘でしょ!口裂け女はね、あんなに大きい口があるんだから食べ物だって食べるの。飲み物だって飲むの。だからね、絶対に出すところもあるの』
「そうだね!田中おばあちゃん、トイレットペーパーはシングルよりダブルのほうがおいしいって言ってた」
『トイレットペーパーは拭くもんじゃなくて食べるもんなのね!あ~そうきたか。さすがは妖怪だわ。トイレットペーパーの使い方が人間じゃなかった』
「まあそれでトイレットペーパーを買ってね、学校に戻ったんだけど」
『うんうん』
「次の日から学校が休校になるらしくて、トイレットペーパー買い足さなくても大丈夫だったんだって」
『妖怪も休みなんかい!もうええわ。どうも有難うございました』